続★俺だけの家政婦さん

恋しくて

ハッ…ハッ……ハッ…

どういうことよ……


――3時間前

差出人と郵便物の厚さから、これが本だとすぐにわかった私は目の前の急ぎの仕事を

猛ダッシュで済ますと空いているミーティングルームに入り、封筒を開けた。


青空の下で洗濯物の真っ白なシーツが風になびいており、その横で

後ろ姿の女の人が空を見上げているイラストが描かれていたその本のタイトルは


『恋しくて』


そして帯には「好きになったのはあなたが最初で最後だ」と書かれていた。

悔しいけど帯だけでキュンキュンしちゃった。

そしてライバルでもある須藤先生からのコメントも書かれたいた。

「リアルに勝てる物はありません。野島景を知りたければこれを読むべきだ」

もしかしてこの物語って野末くんがずっと片思いをしてる人の事が書かれているの?

胸の奥がドクンドクンと騒がしくなる。

別に野末くんが何を書こうが私には関係ないし、それが好きな人のことでも…と

思うのだけれど鼓動は私の気持ちと反比例するかのようにドクンからドクドクへと

一層激しくなるばかり。

それでもこうやって発売前の見本誌をわざわざ送ってきてくれたことには感謝したいし

ちゃんと感想を伝えなきゃ。

そう思った私は仕事そっちのけで一心不乱に読んだ。


そして私は読み終えたと同時に会社を飛び出し電車に乗った。

唇を噛みしめてないと今にも涙が溢れそうだった。



だって野末くんの書いた小説はまるで…


わたしと野末くんとのだったのだから。
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