続★俺だけの家政婦さん
そうだ。『隣恋』に似たようなシーンがあった。

そして続きがあって、浩樹が美菜をしっかりと抱きしめて、

キスしそうな距離で囁くんだよ。

『起こすならこのぐらい近くで起こしてくれないと・・・起きないよ』ってね

思い出したら顔がかーーーーーっと赤くなった。

私この台詞で胸の奥がキューーンとなって自分の言われてみたいって

本気で思っていた。


だけど・・・それはあくまで小説の中であって

リアルでそれやろうとしてるなんて信じられないっていうか

私が野島景の大ファンだって知ってて絶対わざとやってるに決まってる。

「何なら・・・続きやってあげてもいいんだよ」

野末くんは両手を広げて、まるで外人の様に「カモ~ン」と

言いたげにドヤ顔で片方の手で手招きする。

あ~~~ショック!

私の好きだった野島景のイメージが崩壊していく。

「結構です。・・・もうファンやめたいくらいよ」

大きく息を吐き部屋を出ようとドアノブに手を掛ける。

すると野末くんはまたも大きくため息を吐く

「は~あ。そうなんだ。折角今書いてる新作読ませてやろうと
思ったんだけどな~~」

その一言に私の手が止まる。

え?!新作?野島景の新作?

う~~~。悔しいけど・・・…これだけ新作って言葉でドキドキしてるって事は

私、まだファンやめられないかも・・・

「と、とにかく朝食さめちゃから早く来てよね!」

「はいはい」

朝からこの調子で私大丈夫かな。

やっぱり簡単にこの依頼を引き受けるんじゃなかった。

野島景の事凄く知りたかったけど、知らない方がよかったよ。


本当に・・・

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