続★俺だけの家政婦さん
「栞里ちゃん?」

「は、はい」

「もしかして~緊張してる?」

「え?」

「いや、表情が硬くなったから・・・もしデートって表現に抵抗が
あるのなら訂正する。一緒にご飯でも食べにいかない?」

デートから単なるお食事と言われ内心ホッとしたものの・・・

「お気持ちは嬉しいんですけど、私は住込みの家政婦ですし、野島先生は

執筆―」

「住込みは24時間仕事していなくちゃならないの?」

執筆中だからと理由をつけてやんわり断ろうとしたのだが

相手は一枚上手で鋭いツッコミが入る。

確かに住込みと言っても24時間働いているわけではないから
外出だってできる。

だけど、野末くんは今執筆中だし、そんな時に外出していいものか

と思い留まっていると須藤先生は余裕の表情を向ける。

「のじまっちの食事さえちゃんとしていれば問題ないと思うんだけど?

それにたまには息抜きも必要じゃない?難しく考えずに食事に行こう。ね?」

イケメンが首を本の少し傾け口角を上げながら目を細めていう「ね?」は

かなりの破壊力がある。

私は最後に言われた「ね?」って言葉につい「はい」と返事をしてしまっていた。


須藤先生は野末くんには会わずに私との約束を取り付けるためだけにきて

帰って行った。

帰り際

「僕と食事に行くって事、のじまっちには絶対に言わないでね」と言われた。

どうしてかと尋ねるとニヤリと笑って「そのうちわかる」とだけいった。

食事は明後日金曜日に決まったが、野末くんに内緒と言うことに

本の少しだが後ろめたさを感じた。

もちろん、プライベートな事だし、野末くんは単なるお客様なんだから

私が何をしようが関係ないけど・・・


私は大きなため息を吐きながら夕飯作りにとりかかった。



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