あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「悪いけどみんな、手止めてくれるかー?」


前田ちゃんと話を終わらせ、気合を入れて、ファイリングをしていた時だった。


高梨(たかなし)部長が手を叩くと、一瞬現場がピリッとした空気になった。


「えー、急なことで俺も驚いてるんだが、上田課長が異動になって、隣にいる柴咲(しばさき)課長が、この課の課長になった。みんな、よろしく頼むぞ」


え…。そんな急な異動なんて、今までなかったよね…?


それは、この場にいる全員が思っていたらしく、みんな口には出さないけど一瞬ざわついた。


「柴咲だ。よろしく」


たったの一言。それだけで〝この人とは合わない〟そう思った。


「……もう、いいのかい?」

「えぇ。時間の無駄ですから」

「そう、だね…。じゃあ、みんな仕事に戻って」


やっぱり合わない。〝時間の無駄〟とか言っちゃう男って…。


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