あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「……37だ」


一瞬、眉をピクリと動かすも〝取引先〟と言う言葉に引っかかったのか、すんなり……とはいかないが年齢を教える気になったらしい。


「へぇ〜。そうなんですねぇ〜。未婚ですか?」

「……あぁ」

「彼女はいるんですか?」

「それは必要か」

「必要です!」


前田ちゃんって、すごいよね…。こんな無愛想な上司にも普通に接するんだから。


私には絶対無理だ。話したいとも思わない。


それにしても37歳ねぇ。やっぱり私より上だった。


登俊と二つしか違わないのに、なに、この落ち着き感。


知的に見えるシルバーフレームのメガネに、指摘するところがないくらい、しわひとつないスーツにワイシャツ。


ワックスで少し固めているのか、髪型まで乱れのない本当に完璧な人。


喋らなければ、絶対にモテるだろうし、結婚だって出来るはず。


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