あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「あの…」


勇気を振り絞って声をかけてみた。けど、この男は私とは口をきくつもりがないのか無視をされた。


「なんで私なんですか」


それでも聞きたかったことを聞いてみた。何かリアクションは取ってくれるだろうか。


「お前くらいだからな」

「え?」


喋ったと思えば、まったく分からないことを言われ、思いきり眉を寄せて聞き返す。


「上田は上司として、やりやすかったろ」

「え?……まぁ、そうですね。優しかったですし、命令なんてされなかったですし」

「俺は真逆だ。あいつみたいに優しくなんかしない」

「でしょうね」


上田課長は不倫してたかもしれないけど、それを除けば本当にいい上司だったと思う。


私や前田ちゃんなんて残業することはなかったし、ましてや、ショールームに行くなんてこともなかったし。


みんなが少しでも仕事をしやすいように、毎日頑張ってきたつもり。


< 25 / 99 >

この作品をシェア

pagetop