あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「まだ、好きなんだ?」

「え?」


登俊のことを思い出していると、松谷課長の声が上から聞こえ、咄嗟に顔を上げた。


「こんなに切ない顔しちゃって…」

「ま、つや、課長っ、」


松谷課長はスッと手を伸ばしてくると、私の髪を指で掬って掻き上げた。


その顔は妙に色気があって、男の顔をした松谷課長に一瞬戸惑った。


「こら、謙!部下に手は出さないんじゃなかったのか!」


大将の声に我に返る私と「はいはい」と、何事もなかったかのように平然と手を離す松谷課長。


「駅まで送るよ、行こうか」

「で、でも…」


そんな松谷課長は立ち上がると、私の顔を覗き込んできた。


どうしよう。三杯目のビールも飲み干してしまったし、帰らないわけにもいかない。


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