あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「大将、雪乃ちゃんの分も一緒にして」

「えっ、松谷課長困ります!私これくらい自分で、」

「いいから。ここは、おごられておきなよ」


そう言われたら、断れない…。だから「ありがとうございます…」とお礼を言って、ビール代を出してもらったんだけど…。


「謙、ちゃんと送れよ。間違っても、」

「はいはい、手は出しませんよー。じゃあ、雪乃ちゃん行こうか」

「えっと…はい。大将、また来ますね」


流されるまま、居酒屋を松谷課長と二人、出てしまった。


駅まで送ると言ってくれた松谷課長に、やんわり断るも聞いてくれず、結局駅まで肩を並べて歩くことになった。


「ねぇ、雪乃ちゃん」

「はい」

「さっきは大将の前だったから、あんなこと言ったけどさ……手、出してもいい?」

「っ、」


まさか、そんなストレートに誘ってくるなんて思ってもみなかった。


〝手、出してもいい?〟なんて、失恋で弱ってる私にとって、どれだけ破壊力のある言葉か…。


「で、でも。松谷課長には奥さんがいますし、」

「うまくいってないって言ったよね?」

「いや、そうですけど。でも、不倫になっちゃいますし、」

「じゃあ、慰め合うってことならいい?」

「っ、」


この人は、なんてズルい人なんだろう…。


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