あなたの愛に深く溺れてしまいたい
そうして私が書類を取ろうと立ち上がった時、もう一度だけ柴咲課長のほうをチラッと見た。


「っ、」


ビックリした…。私が見た時に、柴咲課長も私のことを見ていて、目が合ってしまった…。


慌てて逸らそうとした時。柴咲課長の口角が左に少し上がった。


柴咲課長が笑った……。


そりゃあ人間だもの、笑うに決まってる。


だけどあの人の笑顔は今一瞬、私だけに向けられたもので(バカにした笑いかもしれないけど…)胸が少しだけ温かくなった気がした。


あれ。私、嬉しいの…?


「せんぱーい、なに突っ立ってるんです?」

「あっ、ごめん!」

「はい。資料なら私が拾いましたから」

「え?やだっ、ごめん!ありがとう」

「別にいいですよ〜。柴咲課長に見惚れてたんですもんね〜、なら仕方ないです」

「ちょっ、そんなんじゃ!」

「はいはい、仕事しますよ先輩!」

「………」


前田ちゃんにこんなことを言われるなんて…。仕事に集中しよ…。


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