あなたの愛に深く溺れてしまいたい
「もう会うなって柴咲課長に言われた」

「そう、ですか…」

「それで、俺に溺れろとかワケわかんないこと言ってきて、ミーティングルームでキスされた」

「はいっ?!俺に溺れろ…?キス…?えぇっ?!」


前田ちゃんは、だいぶ混乱しているようだった。


当たり前だよね、一気に今までの出来事を短編にまとめたんだもの、誰だって混乱するに決まってる。


「もっと言うと、この後9時に飲みに誘われてるの」

「えっ?今日ですか?!」

「うん、今日。嫌だったら来なくてもいいって」

「どうするんですか…?」

「うん、正直悩んでる…」


行くべきなのか。それとも、すっぽかしてしまおうか。


柴咲課長は嫌なら来なくてもいい、と言った。


だから私がいなくても、彼は何とも思わないはずだ。


「悩んでるくらいなら、行くべきだと思います」

「そう…かな…?」

「はい。それに先輩、一番最初、柴咲課長のことすごく嫌ってましたけど、キスまでされて、行くのに悩んでるって、普通嫌だったらその場でビンタでもしてるはずですよ」

「……そうだね」


確かに前田ちゃんの言うとおりかもしれない。


私、あの場でビンタしてもよかったのに、しなかった。それは、嫌じゃなかったから…?


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