理想は、朝起きたら隣に。
四杯目の飲み終えた私には誰の心も届かなかった。
だけれど、ぐちゃぐちゃ考えても仕方がないので、店を飛び出した。
五本目を吸い終わった彼が、煙を夜空へ吹き飛ばしたその瞬間を見ながら、私は彼の背中に抱きついた。
「美春」
「慶斗、あのね」
限界だった。
「どうした?」
優しい彼の声。
後ろから抱きついた私に、両手を上げて降参ポーズみたいな姿のまま固まっている。
「吐きそう」
「は?」
「すっごく気持ち悪い」
「何やってんだ」と、呆れた声で私の両手を外すと、後ろへ向き直り私の顔を覗きこんだ。
「歩けるか?」