理想は、朝起きたら隣に。
その小説を彼が指でなぞるのが、胸を締め付けさせる。
じわりと広がる感情は甘酸っぱくて不透明だった。
「送ってくれたのは助かりました。でも、もう、帰ってください」
目の前に居ること自体信じられないのに、今、彼が何を言っても信じられない。
「言いわけをするつもりはない。俺はきっと君に色々酷いことをした」
「帰って。お願いだから帰って」
頭から布団をかぶって、彼を見ないようにした。
言い訳はしないと言った瞬間、此方を振り返った彼が何を言うのか怖くて必死で逃げた。
「混乱させてすまない。でもこれからはずっと日本に居るから、逃げないで俺を見て欲しい」
「……」
「馬鹿な男だよ、俺は。優衣ちゃんだっけ? あの子が打ったメールをずっと美春だと思って疑いもせずに楽しみにしていた馬鹿だ」