理想は、朝起きたら隣に。
「でも美春みたいな美人から男紹介してもらう勇気ないよね」
「ねー。相手も美春ぐらいの可愛い子が来るって思うんじゃない?」
「そんなことないし、現に私も大学以来彼氏いないんだけど」
漸く飲み終え空になったグラスを、すぐにウエイターが持って行く。
その意味深な笑顔の裏なんて気付いていないふりをして、私は皆と退屈な話に花を咲かせた。
今日結婚する優衣は、高校時代からの友達で、彼女は私を親友だと皆に言っていた。
「お願い。一緒に合コン着いてきて。美春は可愛いからさ、何も喋らなくていいから、ね。ね」
本当に私に喋る隙もないぐらい彼女は一人で場を盛り上げて話の中心になる。
すると、私はいつも輪の外で一人、安いカクテルで腹を満たせていた。
悪気がないのかもしれないけれど、周りが私に植え付けたイメージは『高嶺の華』。
でも断言する。男の人とまともに話なんてしてなさ過ぎて、きっと今は挙動不審になってしまうと。
それに、ネイルサロンで働き出してから更に男なんて縁がない。
優衣も結婚してしまった今、私を合コンに誘ってくれる友人もいないだろうしね。
「それでは、皆さまに幸せのおすそわけを」
アナウンスが流れると、皆が一斉に立ち上がった。