理想は、朝起きたら隣に。

「俺は今も変わらず、美春だけだよ」

その言葉に、とうとう視界が滲んで何も見えなくなった。

二次会で見た瞬間から、私の心を捉えて離さない。

見たくないって思っても、私の心はとっくに視線を外せなかった。

「私」

「ゆっくりでいいから、俺の為に時間ちょうだい」

私もまだ好きだと言いたいのに、この六年がそう素直にさせてくれない。
可愛くない乾いた言葉しか浮かんでこない。

好きなのに。

「取りあえず、お互い服でも着よう」

何故か彼に提案されてしまう。
それでも私は、自分で何も考えられなくて素直にクローゼットから適当に服を引っ張りだした。

「優衣が勝手に見たメールってどんな内容だったの?」

ベルトをかちゃかちゃと鳴らしながら立ち上がった慶斗さんは少しだけ考えてから、内緒と首を振る。

「今と昔じゃちょっと意味が変わるから、もう一回ちゃんと言い直させて」

その言葉を聞いて、私は素直に頷いた。
うまく自分の言葉が言えないのならば、行動だけは素直にしたくて。


セーターを頭からかぶり、膝上まで隠すと腰に巻きつけていた布団をポトンと床へ落とす。
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