理想は、朝起きたら隣に。


「返事を聞くも何も、きちんと言葉にしていない」

「メールで言ってしまうような簡単な言葉じゃないの? 六年前はメールで済まそうとしたんだよね」

どんどん腹立たしくなってそう言ってしまうと、彼は本棚から二冊本を取りだした。
丁度、彼が日本から居なくなってから発売されたミステリー小説だ。五年以上前の作品。
彼は私のちくちくした言葉をすり抜けて、自分が居なかった時期の小説を手に取っていた。先ほどの本はもう読んでしまったのか手に取っていないし。



「六年前、理由を作って会うのを避けていたのは美春だろ。メールで繋ぎとめたかっただけだ」

「……避けていたのは、慶斗の方じゃない」

誕生日に、優衣に連行されて合コンに行っちゃうような私に愛想を尽かしたのだと思っていた。
そんな思いから益々可愛くない言葉が出てきてしまった。

うまく自分の気持ちを伝えきれなくて、なんだか飲み過ぎた胃もムカムカしてきた。

「やっぱり色々誤解されてるんだな」

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