理想は、朝起きたら隣に。
サーっと血の気が引いていく。信じられない。
眠っている間に、慶斗の唇がここに触れたってこと?
「意識がない人にこんな、さ、最低っ」
手で隠しながらわめいたけれど、慶斗は表情を変えない。
真っ直ぐ真面目な顔で私を見たままだ。
「それだけで我慢できたのだから、ご褒美に唇にさせてくれてもいいのに」
「まだ酔ってるんじゃないの! もう出て行って!」
脱衣所に逃げ込むと、そのまま両手で取っ手を強く握った。
「悪い。からかいすぎた」
「簡単に謝らないでよ。慶斗は勝手でいいよね。仕事で海外に行くと同時に別れたのに、戻ってきたらまた私の元に来てさ。都合が良い女だって思ってるからこんなことできるんでしょ」