理想は、朝起きたら隣に。
違う、こんな可愛くないことを言いたかったんじゃない。
私だって一言でも連絡もらえたら、きっと何年だって待てたと思う。
「慶斗、あの、今のは私も一方的過ぎた。ごめん」
すぐに飛び出したけれど、慶斗は怒った様子もなく一度だけ頷くと鞄を手に持った。
「今日の予定は?」
「……休み貰ってる」
「良かった。俺も空いてる。引っ越し業者が昼過ぎには来て、――夜には手が空くと思う。ゆっくり話せる?」
そんな事を言われたら、未練ばっかの私は頷くしかできない。
「じゃあ、あの喫茶店で。あ、まだあるかな?」
「あるよ。店長さんも変わらず渋くて格好いい」
へらりと笑うと彼が小さく息を吐くのが分かった。
彼も少しだけ緊張してくれていたらしい。
六年の時間では、このぎこちなさはきっと普通なんだろうけど。
「じゃあ連絡するから、携帯と――」