理想は、朝起きたら隣に。
「どうぞ」
「早く終われそうなら連絡する」
「うん」
恋人でもないけれど、――友達でもない私たちのこのやりとりは、多分関係をお互いが修復したいからなんだと思う。
もっと酷い言葉を投げつけて、私の六年間を労わってほしいなんて自分勝手な気持ちと、――やっぱり会えて嬉しかったって気持ちが交差してしまう。
「そう言えば、なんで携帯変えたの? 電話番号も新規になってる」
靴を履きながらそう言われて、どう答えようか戸惑った。
けれど、ちょっとでも知ってほしいとも思った。
「どうせ私になんてもう連絡してこないと思ったから、期待したくなくて」
――連絡した?
そう聞きたかった言葉は、呑み込んだ。
したと言われても嘘か本当か分からなかったから。
「でも別に謝ってもらいたいだけじゃないので。じゃあ夜に」
笑顔で手を振って、ドアを閉めた。
どうやら私は、6年間の間に素直さをどこかに置いてきてしまったらしい。
起きてから彼を玄関で見送るまで、――全く可愛くなかった自覚はある。