理想は、朝起きたら隣に。
『うちには置いて帰ってなかったし』と口が滑りそうになって慌てて口を噤んだ。
昨日一緒に眠っていたなんて口が裂けても言えない。
「美春ちゃん、今ちょっと時間ある? 俺、めっちゃお腹空いてるんだけど」
「や、その」
「美春ちゃんと別れてからの憔悴しきった慶斗の話とか知りたくない?」
じりじりと後退していた私に気付き、奥の手を言いだしてきた。
それは――知っていいのか悪いのか。
「昨日の慶斗を見たらさ、もしかしたら別れたって思ってなかったのかなって感じたけどどうなの?」
その言葉に視線を泳がすと、強引に腕を掴まれた。
「俺、カツ丼食べたい」
どう見ても和食なんてないカフェでそんな事を言う林田さんに、思わず笑みがこぼれてしまった。
カフェに入ると、ここはランチメニューが美味しいと教えてくれたのでソレを頼んだ。
すると片肘を着いて、林田さんが私の顔をずっと見てくる。
「残念。めっちゃタイプなのに顔に俺に興味がないって書いてる」
そんなことないです、と言ったら気を持たせてしまうからどう反応していいのか分からない。
「昨日も慶斗が御酒を貰いに来たら二人ともピリピリしちゃってさ」