理想は、朝起きたら隣に。
お互い気にしないようにと思っていたのに、気になっていたのがバレバレだったんだ。
「6年も音信不通だったのに、おかしな話ですよね」
「ええええ、6年も慶斗に放っておかれて彼氏とか作ろうと思わなかったの?」
大げさに驚く林田さんは、椅子の背もたれにずるずると倒れた。
「私に声をかけてくれる人って、慶斗とか林田さんぐらいです」
「うっわー。慶斗むかつく。あと1カ月遅く帰国してたら絶対俺、美春ちゃんを振り向かせる自信があったんだけど」
「ふふふ。社交辞令として受け取っておきます」
一瞬だけ林田さんと恋人だったら……と想像しようとして止めた。
私みたいに意見を言わない女を、ぐいぐいと引っ張ってくれそうだけど私には勿体ない気がしたから。
まだ林田さんは慶斗への怒りが収まっていないのか、ランチが到着してもスプーンを持ったまま考え込んでいる。
しかめっ面で、感情の起伏がはっきりしていて羨ましい。
慶斗はどちらかと言えば、穏やかな感じで、喋らなければ王子様。喋ったら毒舌で意地悪だ。
「やっぱり仕返ししてやろう」