理想は、朝起きたら隣に。
「や、良いですよ」
「もしもし、慶斗? 今、お前何してるの?」
「林田さん!」
いつの間にスマホを取り出したのか、周りの席に人が居ないことを確認してから、しかめっ面で電話している。
「美春ちゃんを一人にして引っ越しとは良い身分だな」
「本当に止めてください」
私が携帯を奪おうとすると、大丈夫だからと人差し指を出されてしまった。
でも大丈夫な気がしない。
「6年も大事にしてくれてる人なんてそう居ないんだからな。大事にしろよ。それで俺に友人代表をさせろ。は? 酔ってねえよ!」
林田さんの言葉を聞いているだけで、二人がどんな会話をしているのか分かってしまう。クールに微笑むだけの慶斗が容易に想像できてなんだか腹が立ってきた。
「林田さん、伝言お願いしてもいい?」
「ん?」
「犯人はクリーニング屋の店長と、薔薇の屋敷に住む未亡人だよって」
今日、慶斗が借りて行った推理小説の犯人だった。
カフェで読もうとして、そのからくりに気付いた時どんな反応を見せてくれるのか今から楽しみ。