理想は、朝起きたら隣に。
「おい、犯人はクリーニング屋の店長と、薔薇の屋敷に住む未亡人だからな。じゃ」
有無を言わさず電話を切る林田さんのファインプレーに、手で口を隠して笑ってしまった。
頭が切れる人なんだなあって。
「いいよなあ、慶斗は」
「そうですか?」
「電話越しで伝言だけなのに、君を笑顔にさせちゃうんだから」
その言葉を聞いた瞬間恥ずかしくて顔が真っ赤になった。
「ほ、ほら、ランチのスープが冷めちゃいますよ、食べましょう」
「美春ちゃん、俺にも6年待ってくれるような女の子紹介して」
「……」
良い人なんだけど、彼はきっと私の目の前にある珈琲の角砂糖よりも甘く、そして軽い。
「林田さんは待たせるより、一緒に行こうって誘った方がいいですよ」
私も、もし言える状況だったらそう言っていた。
あの頃慶斗の気持ちが分からなくて不安じゃなかったら、一緒に行きたいって言いたかったと思う。