理想は、朝起きたら隣に。

慶斗がバイトしていたカフェは、隣接する公園の木漏れ日で森の中にあるような静かな空間のカフェだった。

芝生のある公園の周りを大きな木でぐるりと囲んでいるので、騒音は来ない。
けれど、春には桜のはなびら、秋には紅葉が、カフェと公園の間御細い道に絨毯のように敷き詰められる。

その絨毯の上を通ってカフェに向かうのが私は大好きだった。


何百とある珈琲を、そこの店長やバイトがお客に合わせて挽いてくれるので、いつも美味しい珈琲が飲めた。


細い道には、名残である桜の花びらが落ちていて、木漏れ日の中、カサカサと葉が揺れる音がする。
一歩抜ければ、ビルが立ち並ぶオフィス街なのに、切り取られたような別世界だった。

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