理想は、朝起きたら隣に。
それから優しく髪を撫で、触れるだけの口づけをすると、また歩き出す。
その後居心地のいい無言の中、駅の近くのイタリアレストランへ入った。
慶斗が六年ぶりに帰国したということで、知り合いだという店長さんは大喜びでシャンパンやワインをごちそうして下さった。顎鬚が似合うダンディなお兄さんで、慶斗を弟のように可愛がってくれているようで、始終頭をガシガシ撫でていた。
6年前はまだホテルで働いていて、最近レストランを始めたらしい。
「ああ、美春ちゃんだね。慶斗が自慢してたよ」
「え」
「うるさい」
と言いつつも満更ではない顔で隣に座っている。
「自慢してたんだ?」
にやにや聞くと、当たり前だろと目も見ずに言う。
悔しいから、今度もまた犯人の名前を言ってしまおうと誓った。