理想は、朝起きたら隣に。

「そう言えば、美春の恋話とか聞いたことなかったよね」
オレンジジュースを持って来てくれた美穂が隣に座りながら首を傾げる。
彼女は肉食系だったので男が途切れたことがなかった。今も、結婚には向かないと愚痴ってはいるが彼と同棲中のはずだ。

「短大時代に、カフェで二人で本読んでた人いたよね。すっごいイケメンだった記憶がある」
「え、見てたの? まあ、短大の時に半年ぐらい付き合ってたけども」

本屋でバイトしていた私に毎月必ず推理小説を予約して来る人。

その推理小説は私がいつもカフェで読んでいるやつ。

だからちょっと近親感が沸いて――毎月予約に来る日が待ち遠しかった。

ある日の、クリスマス前に予約に来た日。

彼は予約票にいつもと違う文章を書いた。


『一緒にこの本を読まない? 24日にデートしよう』

「え」
予約票を握り締めて真っ赤になった私に、彼は目を細めてちょっと照れくさそうに笑った。

「君を予約したいんだけど」
< 6 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop