理想は、朝起きたら隣に。
私が推理小説を好きだと知って、彼も推理小説にはまったらしい。
「ページをめくる手が綺麗だなって思ったら本屋で再会するんだから、ラッキーって思ったよ」
「あはは。私が行くカフェでバイトしてたんですね」
ずっと中学から女子校で女子短大に通っていた私は、男の人と話すのが苦手だった。
だから、強引だけど優しい彼が、すぐに好きになったのに。
「えー、なんで別れたの?」
「……その、彼の誕生日に合コンに行っちゃって」
「えー! 美春最低じゃん」
美穂の言葉に他の人も頷いた。
「結果的にね。今すぐ来てって必死に電話で言われちゃってさ」
優衣が電話の向こうで『お願い、美春しかいないの。今すぐ来て。助けて』そう言われて、彼に謝ってちょっとだけ優衣の元へ向かった。
すると待っていたのは、人数が足りなくて半べそ姿の優衣。
私は彼氏がいるし、彼の誕生日だと伝えたのに。
急いで戻ったけれど、あの合コンメンバーに彼の友人が居たらしい。
それから連絡が途絶えがちになり、自然消滅してしまった。
もっと必死で弁解したり謝るべきだったけれど、――彼の心が急速に離れていっている気がして怖くて、決定的な言葉を聞くのが怖かったんだと思う。