部長の溺愛に困惑しています。
「ああ…今日は森崎の見舞いに行ったから早めに会社を出たんだよ」


片足を立てて座り直す部長は、そう言ってビールをぐびぐびと飲んだ。





「お見舞って…森崎さん入院したんですか!?」

「うん。今日の昼休みに突然倒れて病院に搬送された。検査してみたら胃潰瘍だったらしくしばらく入院するって」


森崎さんを心配する気持ちと、部長がお見舞に行った事実を知って嫉妬する気持ちが胸の中で交差する…

部下を想う部長の気持ちはわかるはずなのに…どこか面白くない。





「たいしたことなくて良かったよ」


安心したかのような部長の横顔を見て胸がチクリと痛んだ。




「…本当良かったですね」


複雑な感情の中笑顔を向けて言うと、部長はすぐに眉をしかめて難しそうな顔をした。





「そうでもない。来週はイベントがあって営業は忙しい。森崎がいないとなると尚更だ。今から頭が痛いよ」

「イベント?」

「そう。うちと他社と共同で化粧品に関する情報発信イベントが都内で行われるんだ。新商品のプレゼンもあるからうちとしてはかなり気合い入ってたんだが、森崎がいないとなると厳しいな」
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