(仮)二人の世界
香夏子はお手洗いにきていた。(はぁ~、TAKUMAさんって、いつもと違ってなんだか怖い感じがするわ?…気のせいならばよいけど)用を足し・襦袢を整えるが密林にあたる部分がしっとりとしている(嫌だわ~、香水でもかけておきましょう)とバックから取り出して、香水をふると、甘いブーケの香りが漂った。着物も整えてから、その場から出ると一人の女性が会釈をしたので、香夏子も会釈をした。化粧鏡前に立ち、化粧をし直して、(よし!もうTAKUMAさんの誘惑には負けないから!)と…奮起するが、結局負けてしまう香夏子は、(惚れちゃったらね~)と他人事のように心で呟き、席に戻ったら、急に悪寒が背中を駆け抜けた。「やぁ、ひ、久しぶりだね~、元気だったかな~」と、弱弱しく挨拶する、紘。その横に座っている女性は私達も若い女性だが、あの理沙を思い出させる感じがし、香夏子は後ずさりをした。そんな香夏子をTAKUMAは、「大丈夫だよ、おいで~」と優しく香夏子に告げた。四人はテーブルをはさみ、数秒間、静かな時を刻んだ。香夏子の視野には、真向いに座っている紘の顔がぼんやりしだし、TAKUMAの顔さえもぼやけていた。ただ理沙に似た彼女の声がキャキャしていたので、頭痛がひどくなる一方だった。話が二人の出会いやこれまでの近況報告など、終始TAKUMAは頷き、紘の話や彼女の話を聞いていたようだ。香夏子というと・・・いつの間にか、カウンターがある席に移動していたのだ。多分彼女の行為に嫌悪感を感じたせいである。彼女は紘よりもTAKUMAさんばかりじっと見つめていたのだ。「TAKUMAさんって、お仕事大変なんですかぁ~」と甘ったる声を出しては、テーブルの下では自身の脚でTAKUMAさんをつついていたからだ。かという紘も座っている椅子で彼女と手をつないでいるのに、ちらちらと香夏子を見つめては「か、香夏子さん、突然すみません、このような形で…反省しているんですよ、僕」と言いながら香夏子の片足をぐいっと自身に引き寄せるのである。香夏子はびっくりして、その場から逃れたのだ。昼時はクラシックがかかっていた店内がジャズに変わっていた。まわりの客層も若い女性たちから、男性たちに変わっていた。中央に丸いテーブルがあるので、香夏子は一人座った。少し離れた所に分厚い本を読んでいる人がいた。ぼんやり見てると、そのとなりにいた男の子がベルを鳴らし、「マスター、あちらに例の物をさしあげて~」と笑顔でいうとマスターは「かしこまりました。」と厨房へと入っていった。「まったく、お前は~」と分厚い本をたたみ、若い男の子に一言いうと、こちらを向いて「やぁ、香夏子さん久しぶりだね~」と微笑む男性を香夏子は見つめて、「師匠!師匠~なの」と笑顔になり、座っていた椅子から降りて、師匠の元へゆくと師匠の肩に香夏子は両手をかけて、抱き着いていた。師匠も香夏子をそっと優しく抱きしめて「どうしたんだい!なにかあったの?」と優しく呟いた。橋本はびっくりした!?学校内では師匠にあまり・ほぼ近づかない女性が多いせいか、女性と仲良くしている師匠の姿を見てドキッとしてしまったのだ。そこへマスターが、「お待たせいたしました」とチーズケーキを香夏子の前に置いた。橋本が付かさず「どうぞ、お嬢さん。僕、橋本って言います、師匠の弟子です!」ととびっきりの笑顔で香夏子にいうと、師匠に抱き着いていた手を離して、「あっ、ごめんなさい、お邪魔しちゃって~」と頬を赤らませて香夏子はいうと、橋本は「いいえ、師匠にこのような女性がいるなんて知らなかったので~」というと、隣に座っていた師匠が橋本に振り向き「何を言っているんだ」と睨んだ。香夏子もクスッと笑い「違いますよ~、師匠には色々と悩みや聞いてもらったりして、お世話になりっぱなしで~、私一応彼氏いますから~」と悲し気に言いテーブルにあるお皿のものを見て「橋本くん、いただいてもよろしいのかしら?」と香夏子がいうと、橋本は不思議な顔してから、微笑み「どうぞ、これも縁ってことで~」という。師匠と香夏子は見つめあい、クスッと笑う。そんな中、香夏子がよろめきかけたが、香夏子を支える手が二つTAKUMAと師匠の手が重なった。二人は見つめあうと「師匠もきていたんだね~」とTAKUMAがいうと、師匠は「あぁ~、後輩とね、良く…」と言いながら、TAKUMAの手から離れて、椅子に座った。TAKUMAは香夏子をまず椅子に座らせてから、自身も椅子に座った。マスターに「レーベンブロイを下さい」というと、「あぁ、私も~」と香夏子。フォークを持ち、幼い笑みを浮かべて「いただきま~す」とスコーンセットを一口パクリと食べると、鼻からケーキの香りを吸い込み、「わぁ~やっぱり美味しいわね~」とマスターにいうと、「ありがとうございます」と答えた。橋本はじっと香夏子に仕草に見とれてしまっていたが、ふと師匠やTAKUMAはをチラリとみると、二人とも香夏子を優し気な眼差しで見ていたが、自身の前にある飲み物を飲み干し、「もう一杯、おかわり」と同時に言うのだ。二人見つめあうと笑いだした。(ああ~、いいなぁ、僕も師匠としたいよ)と橋本は、少しばかり嫉妬した瞬間に、香夏子と目が合い香夏子の動く唇を橋本は見つめると(こ・の・ふ・た・り・仲が・良い・から・焼いちゃう・よね・!)とウインクをして、橋本に伝えたら、橋本がクスッと笑い(そ・う・だ・ねぇ・!)と唇を動かして答えた。香夏子も笑みを浮かべて、また、一口ケーキを食べた。