(仮)二人の世界
テーブルのうえには、メインである「軍鶏すき鍋」がぐつぐつと音を立てて、二人の間で食欲を誘う香りを漂わせいる。TAKUMAは、日本酒を飲みながら、小鉢に鍋にある食材を入れては香夏子に差し出す。香夏子は「ありがとう」と告げて小鉢をみて(いい香り~)ト」ニコリと微笑む。小鉢にははじめから、ふんわりしたメレンゲがありその上にTAKUMAがよそった野菜や軍鶏がちょこりと乗っている。TAKUMAは、香夏子がふうふうと唇をとがせながらゆっくりと口の中に軍鶏を頬張る仕草を見て微笑む(あいかわらず、猫舌だなぁ)と思い自身も小鉢の食材を頬張る。数分間は二人は食する事に夢中になり、部屋は静けさが漂う。部屋の外雑音や隣の部屋の話し声がはっきり互いの耳に聞こえ始めて二人は見つめあい微笑んだ。TAKUMAが日本酒を飲みグラスを置くと。テーブルのしたで香夏子の腿を弄っていた脚をそっと下して、香夏子を見つめて「ごめんなぁ、あのアパートの部屋の事黙っていて…」とテーブルに両肘をつき、両手を組み香夏子をじっと見つめる。香夏子は、箸を置きTAKUMAを見つめてちょっぴり悲し気に「うん。でもどうして?」と告げると「今の暮らしが落ち着くまでは。と、もし思い出したらと…」と悲し気に答えたTAKUMAの言葉で、香夏子はブルッと全身が震えたが、「もう大丈夫だから、ほんまに~」と小鉢をとり鍋にある食材を入れて、口の中にパクリパクリと入れてTAKUMAに微笑んだ。TAKUMAも香夏子の仕草を見て安心し微笑み、鍋から食材を小鉢に移して、口に運んだ。
「おおきに~、ありがとうねぇ、またおこしやす」とカウンターの中にいる店長と会計の場所にいる女将が、ハモるように言うので、思わず笑顔になる二人はお店をでた。
夜は更けていたので、道行く人々も、京町屋に変わり昼間のは別世界に変わり、ほのかに灯る小さな提灯や店から籠もれる光と香りが、人々を引き寄せるのだろう。
観光客といってもカップルが多く、各々でほんのり輝く女性や艶めかしく漂う男性ばかりで香夏子達もその世界の中で…TAKUMAの手をぎゅっと握る香夏子は俯き加減に話す…TAKUMAは香夏子の手から伝わる熱を感じながら、香夏子が話す言葉に頷きながら、声をかけている。時より、車が通ったり酔っ払いのサラリーマンに絡まれそうになる香夏子をTAKUMAは、自身の身体に引き寄せて、相手にするどい視線を投げかける相手も思わず怯む位に…。
TAKUMAはあまり人込みが嫌いなのだ。香夏子の為や、仕事上インタビューなど受ける事もあるが基本は、ただ自由人じゃないが、ほとんどの時間はデスクに這いつくばり、作品に没頭することが多い。でも、TAKUMAの中での香夏子は唯一の人になっている。マネジャーには、「先生は、見栄え爽やかなんですから、もう少しきちんとしてください」とぶつぶつ言われているので、(あの女はイヤだ)とよく香夏子にボヤいてた。香夏子もTAKUMAのマネジャーの気持ちもわかっていたが、TAKUMAにはあえて言わなかった。時より雑誌などに出ているTAKUMAを見つけるとドキドキしてしまう。TAKUMAが掲載されているものを知らない女性や知らない男性が読んでいたり、購入する事はうれしい反面、ちょっぴり嫉妬してる香夏子自身がいるので、マネジャーから暮らしや服装などの注意を受けるが、TAKUMAの事想うと…。(こんなに傍にいても、通りすぎる人はちらちらとTAKUMAさんを見ているわぁ~、本当に着物を着ても似合っているし、とても色っぽい、女性はともかく男性が見てもドキっとするわ)と、考え込むと「香夏子、顔上げなさい、僕がいるから怖くないだろう~」と俯いてる香夏子の顔を除き込み微笑むTAKUMA。香夏子は、頬を染めて「はい」と呟いた。二人はゆっくりながらも、花見小路通りを抜けて、四条通りまで出てきたので、タクシーを拾い後部座席二人は座ると、TAKUMAが「よーじや銀閣寺店近くまで、よろしく」と伝えると香夏子を見つめて、ほんのり赤く染まっている香夏子の顔そっと両手に包むと優しく口づけをし離れて、香夏子をじっとみて「帰るよ」と囁き、また軽く接吻をした。二人は手をつなぎながら、ウトウト寝てしまっていた。「お客様、着きましたよ」と言う言葉で、同時に目が覚めた。支払いを済ませて、タクシーを降りるとひんやりとよるの風が吹いた。「ようじや」をすぎ、「五健ういろをう哲学の道店」や「ギャラリー高野」があり、とある一角を過ぎて、登坂を歩むと二人がひととき過ごした洋館がある。久しぶりに着く我が家まで、香夏子は着物の帯以上に引き締めて上がる想いではんなりと進む。生い茂る雑草や木々たちがヒュ~と音を鳴らしざわめく、香夏子は急に淋しさに駆られて、先に歩むTAKUMAに抱きついた。TAKUMAはびっくりして「どうした?」と振り向き香夏子心配そうに声をかけ、腕を香夏子の背に回し、真横に引き寄せて、「もうすぐだよ、さぁ帰るよ」と、おでこにキスをした。古びた洋館の玄関をすぎ、甘く香しい二人の部屋に、進んでいく二人だった。
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