⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
第1話 再会
「お~い!こっちだ、こっち。大神~い‼」

そんなに手を振って、デカイ声を出さなくても分かる。

心の奥でツッコみながらも、振り返る女子どもの視線を意識して顔をつくり、俺は黙って右手を上げた。
 
金曜日のビア・ホールは人で賑わってはいるものの、ヤツのデカイ図体はイヤでも目を引く。

「久しぶりだなあ、おい!」

言いながら肩をバシバシ叩く。

「止めろ馬鹿力。
燈子も来たいと言ってたんだが……
身重の身ではな。止めさせておいた」

取りあえずビールを2つ注文する。

「身重かあ、あのトーコちゃんが。なんかヘコむな。……まさかオマエの子か?」

「ッたりめーだ。他に誰がいるんだ」

「ショジョ生誕とか……」

「んな訳あるか、100パーセント俺の精…モガッ」

「……それ以上は言うな」

このヤタラと声と図体のデカイ男は、熊野吾郎。
10年ほど前、同期入社で同じ課に配属されて以来のくされ縁だ。
 
 
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