⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
マツコは、訥々と話を始めた。

あの日____

_大神さんね、しこたま酔っていたの。
無理もないわ。3日連続のパーティのうえ、いくら女の子の前だからって、カッコつけてテキーラの一気飲みなんてするから… 


シラケた目付きで、燈子とフユキが俺を見ている。


_うわぁ、まずいわこれ……
察した私は、真っ青になった彼をその場から連れ出して、それはそれは丁寧に介抱してあげたわ。
あ、変な意味じゃないわよ?


今度は花岡くんが、ギロりと俺を睨んだ。   
……いたたまれない。

_大神さん、すごく感謝してくれてね、弱々しくも私の手を握り締めて、何度も何度もこう言った…

『ありがとう、本当にありがとう。君がまるで女神のように見える』

「「「ほー」」」

……やめてくれ。
こっ恥ずかしくて死にそうだ。


最後に、

『何か困ったことがあったら、いつでも俺を頼ってくれたらいい』

真っ直ぐに澄んだ瞳で私を見た___



「それだけ。
……だからね、大神さんがこの子のパパであるはずないの。
そんな状態じゃなかったの。
どう?安心した?」


うん、安心した。

ホッと胸をなでおろすと、同じ表情(かお)をした彼女と目があった。


_妊娠が分かって、誰にも頼れなくなってて途方にくれた時。

ふとその瞳を思い出したの。

だけど大神さんは、当然のように私のコトなんかすっかり忘れてた。

_必死だった。
そりゃもう蜘蛛の糸にすがる気持ちで、演技したわよ。

私にはもう、それしかなかったんだから……
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