⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
「フユキの権利」
「え、家を……出る?」
2・5メートルの半径距離を保ったまま、燈子は呆然と立ち尽くした。
俺はなるたけ平静を装って、軽い調子でそれを伝えた。
「ああ、
暫くはホテル住まいで……その間に部屋を探すよ」
あらかじめ用意していたスーツケースをトンッと軽快に叩いて見せる。
「そんな………それなら私がっ」
「イヤ、君はここでフユキを見ていてくれ。
時間をかければ回復するかも知れないからさ。
君には悪いけど……」
次の単語を口に出すには、かなりの勇気を要する。
俺はスウッと息を吸い込み、一気に言い切った。
「り、離婚とかは考えられないから」
彼女がハッと息を呑んだ。
「少し距離を置いて、ちょっとずつ慣らしていけば……きっと……前みたいに…」
最後はもう、上手く言葉にならなかった。
「アキトさ……」
あーあ、ミットもない。
とうとうあのコの前でこんな…
年を取ると、涙脆くなるのかもしれない。
俺って…
なんて格好悪いんだろう。
2・5メートルの半径距離を保ったまま、燈子は呆然と立ち尽くした。
俺はなるたけ平静を装って、軽い調子でそれを伝えた。
「ああ、
暫くはホテル住まいで……その間に部屋を探すよ」
あらかじめ用意していたスーツケースをトンッと軽快に叩いて見せる。
「そんな………それなら私がっ」
「イヤ、君はここでフユキを見ていてくれ。
時間をかければ回復するかも知れないからさ。
君には悪いけど……」
次の単語を口に出すには、かなりの勇気を要する。
俺はスウッと息を吸い込み、一気に言い切った。
「り、離婚とかは考えられないから」
彼女がハッと息を呑んだ。
「少し距離を置いて、ちょっとずつ慣らしていけば……きっと……前みたいに…」
最後はもう、上手く言葉にならなかった。
「アキトさ……」
あーあ、ミットもない。
とうとうあのコの前でこんな…
年を取ると、涙脆くなるのかもしれない。
俺って…
なんて格好悪いんだろう。