⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
フユキのいう
『モモチャン』は、マツコの腹の子供のことだ。

どうやらフユキは、まだ彼女が家族の一員だと思い込んでいるらしい。

何だかんだで、まだ子供なんだよな…



「フユキ、“モモチャン” はね、お父さんの子じゃないよ」

抱き上げようと手繰り寄せた手をサッとすり抜け、フユキはトーコに抱き付いた。

トーコはフユキを撫でながら言った。

「モモチャンとおねえさんはね、
新しいお父さんと、新しいおうちにいったんだよ?」 

しかしフユキは頑固に首を振った。

「ちがうよ?
フユキもモモチャンも、
とうさんがとうさんで、
とうさんがいてほしいって、いってるの。
ほら、今も……ねぇ?そうだよね…」

フユキは、トーコのお腹に耳を寄せ、愛しげに目を閉じた___


「「え……」」



トーコと一瞬


目が合った。

 

しかし。俺は再び玄関扉を開けた。

「じゃあ………行ってくるわ」



「待ってアキトさん、私って……もしかしてっ…」
「とうさん!」

引き留める燈子に、
俺は一言付け足した。


「……薬局」


「あー……オネガイシマス」

「フユキも行くか?
ガチャ引かしてやるぞ」

「ヤターー!!!」


ちゃっかりしたもんだ。

さっきまでの涙が嘘みたいに、大急ぎで靴を履き、先に玄関を出ていったムスコ。

その姿を背に、俺は燈子に微笑みかけた。


彼女は
困ったような照れたような
ホッとしたような……

泣きそうな。

複雑な顔で手を振った。
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