⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
次の日の昼。
午前の打ち合わせが長引いて、少し遅れて待ち合わせ場所に着いた。

燈子が嬉しそうに手を振りながら駆け寄ってきた。手に何か持っている。
 
「おっと」
案の定、ヨロけた彼女を慣れた手つきで抱き止める。

「エヘヘ、お弁当」
ストンと立たせた彼女は、嬉しげにそれを持ち上げた。

重箱3段。
デカイだろ、体重減らすんじゃなかったのか。

突っ込む気も失せ、黙ってそれを受けとると、俺は彼女の右手を引いた。
「行こうか」

 
運動公園の遊歩道、ここは会社に近いだけあって、うちの社員の顔もチラホラ見える。

幸いに今日は晴れ、散歩する者、ジョギングする者、ベンチに腰掛け話し込む者……

俺が通りかかると、ペコリと頭を下げて会釈し、それから驚いたように燈子に目を移す……

気恥ずかしくなった俺は、手を離して少し歩調を早めた。

途端に遅れだした燈子が、ポテポテと俺を追いかける。

気がついた時、彼女は息を上げていた。
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