⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
オネエサンから受け取ったジョッキを再び飲み干すと“ダンッ”とテーブルに叩きつけた。

「おい…」

常日頃、見かけに似合わぬ穏やかなオトコが、今夜はイヤに荒れていた。

中々本題に入ろうとしない熊野にあわせ、仕事や同期の噂など、他愛ない話題で杯を重ねる。

そのうちに彼もやっと饒舌になってきて、ぐいっと口を拭くと決意したように言い出した。


「……彼女がよお、どうやら結婚したいみたいなんだよな」

「なんだ、まだ別れてなかったのか。
良かったなあ、オマエと結婚したいなんて女がいて」

つい憎まれ口を叩くと、ヤツはギロリと睨んだ。
怒らすとコワイので、慌てて言い直す。

「……いいじゃないか、すれば。
あ~っと…確かもう4年くらいは経つんだろ」

年齢は確か同い年、無理矢理見せられた写真では、中々の美人だった記憶がある。

「まあな…」

歯切れが悪い。

「なんだよ…問題あんのか?飽きたとか……まさか他にイイ女が出来たとか?」

「オマエと一緒にするな。…そんなんじゃねえよ」

事も無げに失礼なコトを抜かした後、奴は深い溜め息をついた。

「結婚…てのがどうもな。ほら、彼女ってさ、ウチの会社の専務の娘なんだよな」
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