⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
……さっきの板倉の態度。

貴重なお散歩タイムをロスさせた上、思わせぶりな台詞と媚びは、燈子の不信感を煽り、夫婦仲を冷えさせる、回りくどい作戦か。

まあ多分、燈子あんまり気が付いてないけどな。

俺は…燈子にチラッとでも不安を抱えさせたまま、離れ離れになりたくない。

互いに笑顔で実家に送り出してやりたい。

「最後、長めにフーっ……プアッ、い、息が‼」
 
赤い顔でハアハア言っている彼女のアホっぷりが、たまらなく切ない。

ダメだ、何だか泣けてきた。

「燈子ぉ…」

俺は構わず彼女を目一杯抱き締めた。

「え?…ちょっと、秋人サン、ここは天下の公道で…」
「…燈子、寒い」
いや、寂しい。

「……も~、寒がりだなあ、秋人サンは」

彼女がギュウッと腰に手を回す。

今はこうして、側(そば)に居るからいいようなものの…

俺、こんなんでホントに大丈夫なのか?

何だか嫌な予感しかしない。

カミサマは何故、俺ばかりに七難八苦を与えるんだ…
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