⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
しかし彼女は熊野の横に立つと、顔を叛けた俺を見上げ、じっと覗きこんだ。
彼女の表情からは何も読み取れない。ただの白紙、タブラ・ラサ。
いつもの会話と変わらない調子で尋ねた。
「秋人サン。何かした?」
俺は強張ったままの首をやっと横に振る。
「……何もしてない……誓って」
勇気を出して、小さな彼女をじっと見返した。
こんな事言ったって……
今の俺は、名前のとおりの『オオカミ少年』。
どれだけ本当の事を言っても、信じられる要素はどこにもない。
せっかく約束守ったのにな…
過去の行いは悔やんでも、消えることは決してない。
「きっさま、まだそんなコト言って…」
怒れる鍾馗様の如く、襟元をもう一度掴み上げて再び手を振り上げた熊野を、彼女は静かに制した。
「熊野サン、止めて下さい。
彼が……ああ言ってますから」
「とうこ…?」
その時彼女が見せたのは
これまでにない慈母の笑み。
彼女は熊野に向き直る。
彼女の表情からは何も読み取れない。ただの白紙、タブラ・ラサ。
いつもの会話と変わらない調子で尋ねた。
「秋人サン。何かした?」
俺は強張ったままの首をやっと横に振る。
「……何もしてない……誓って」
勇気を出して、小さな彼女をじっと見返した。
こんな事言ったって……
今の俺は、名前のとおりの『オオカミ少年』。
どれだけ本当の事を言っても、信じられる要素はどこにもない。
せっかく約束守ったのにな…
過去の行いは悔やんでも、消えることは決してない。
「きっさま、まだそんなコト言って…」
怒れる鍾馗様の如く、襟元をもう一度掴み上げて再び手を振り上げた熊野を、彼女は静かに制した。
「熊野サン、止めて下さい。
彼が……ああ言ってますから」
「とうこ…?」
その時彼女が見せたのは
これまでにない慈母の笑み。
彼女は熊野に向き直る。