⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
「じゃ、身体に…気をつけてな」
「ウン。アキトさ…いえ、大神サンも」

身の回り品だけを詰めたキャリーケースを右手に、左手には3つのフユキの手を繋いで、彼女が俺を振り返った。

危うく泣きそうになるのを堪え、手を振った俺。

燈子が、フユキがドアの向こうに去っていく。

行かないで欲しい。

俺を置いて行かないでくれ。

お願いだから……頼む‼


「嫌だアアアアッ‼‼」
 


がばっ。

「はひ?……どうしたの?」
「あ、いや…」

夢…か。
 
隣で眠っていた奥さんが、眠たげに目を擦っている。

「ふふっ、スゴい汗」

寝ぼけ眼でニコッと笑い、寝間着の袖で俺の額を拭くと、またパタリと眠ってしまった。

…カワイイ。
襲いかかりたい。

「と、トーコちゃん?」
チョイチョイ頬をつついてみるが…

「ぐ~~…」

ダメだ。爆睡しているようだ。
俺は咄嗟の衝動を諦め、ドサッと身を横たえた。

眠れない…縁起でもない夢見の悪さだ。


しかしもっと縁起でもないことに
俺がこんな夢を見るのには、


ワケがある。
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