⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
確かそうだ。

それを隣にいた女が囃したもんだから、使命感に燃えた俺は、ソイツをイッキに空けてしまったんだっけ……
 
あれ?


以降の記憶が


ナイ。



俺が黙り込んだのを見てとると、堂林がシタリ顔で話始めた。
 
「そうそう、僕はそれを『大丈夫かな~?』と思いながら、向かい側の席で見てたんです。
その後、真っ青になった貴方がその女のコに支えられて、会場を出ていきました。

それから……1~2時間後くらいして、えらくスッキリした顔で2人して席に戻ってきたんです」

そうか。確かにあの女……
 
ボヤけた記憶の輪郭を、今さっきの女に重ね合わせる。

「間違いありません。その女(ヒト)こそ、『カノンさん』もとい。松子さんです」

キッパリと言いきった堂林は、誇らしげにフフンと鼻を鳴らした。

「なるほど。問題はその2人で消えていた間に何があったかだが…」 

フムフムと聞いていた仙崎秘書室長が、チラリと俺を窺った。
< 80 / 115 >

この作品をシェア

pagetop