⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
「はい」

モニターにペコリと頭を下げたのは、若いのに頭が大分後退している小男だった。

格好からすると宅配業者だろう。
燈子のヤツ、また何か通販頼んだな。

「ああ、荷物ですかね?」

カチャリ。
俺は玄関を開けた。


途端、

「……き、貴様か」
え?

男はズカズカと俺の前まで間合いを詰めた。

「な…?」


「貴様が…よくも、よくもマッちゃんを~~!!!」


ドカッ。
「はぐぁっ」

不意をつかれた俺は、廊下の真ん中まで後ろ向きにぶっ飛んだ___


その音を聞きつけて、奥から3人がなんだなんだとやってくる。
倒れている俺を見るなり、3者3様に声を上げた。

「秋人さんっ⁉」
「パパぁ~?」 
「とーさん、ネンネ?」


「…バカくるなっ、危ないぞ!」

殴られた腹を押さえながら、ようよう起き上がった俺は、かろうじて皆を制止した。


しかし激昂した男は、ハアハアと肩で息をしながら、こちらへと迫ってくる。

「くっそぉ…嫁に…ガキまでいるってのか…よぉ!」
なおも追撃を加えようと、拳を振り上げた男。

「やめろっ」
男の攻撃から咄嗟に3人を庇う俺。



と、マツコが俺の腕をすり抜けて、男の拳をぐいっと掴んだ。


「マツコッ、よせっ」
「カノンちゃん、ダメッ」 





「トシくんっ、もう止めて。
トシくん!」
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