懺悔
自分の置かれてる状況がイマイチ把握できないでいた。
秋生の存在がそこにあるってことは、あの女の事でだ。
それしかないと、隼は思った。
小さな町の寂れた商店街の一角にシャッターの閉まったままのタバコ屋に隼は生まれた。
母親の祖母が営んでいたタバコ屋は祖母が亡くなるのと同時に閉店したが、奥にある住居スペースに母親と隼は暮らしていた。
17歳の時、未婚のまま隼を産んだ母親は隼を育てる為、昼夜問わず働いた。
17の娘が一人で子供を育てるのは、並大抵の事ではなく、綺麗だった髪はバサバサになり肌もガサガサになって疲れ果てていった。
けれど、母親は心から隼を愛し可愛がった。
母子家庭でも不自由させたくないという想いは強かったからだ。
けれど、隼が3歳の頃から、一人の男が家に入り浸るようになった。
その男は、首に金色のネックレスを揺らし、いつも煙草を吸って下品に笑う奴だった。
隼はその匂いも声も、その男の全てが嫌で男が家に居る時は家の前の公園で、一人時間を潰すのが日課だった。
隼が5歳になる頃、母親はいつまでも男に懐いてくれない隼の存在を煩わしく思う様になった。
余裕で数日、隼を家に一人置いて帰って来ない日もあった。
そんな時は決まって、テーブルの上に数百円の小銭と6枚切りの食パンが置かれていた。
隼はいつ帰って来るかわからない母親を待ち、1日1枚の食パンを食べて過ごした。
お腹が空けば椅子を台所に運び、よじ登り水道から直接、水をたらふく飲んだ。
どんなにしんどくても、綺麗に整理整頓されていた二人の家は、汚く汚れ果てていった。
ろくに食事を取らなくなった隼は、5歳児の平均よりも小さく華奢な体つきだった。
久しぶりに帰ってきた母親の足にしがみつき、「行かないで」と懇願した。
振り払おうとするけれど、華奢な体の何処にそんな力があるのか不思議な程に離れない。
母親は思わず、隼の小さな頬を平手打ちした。
勢いが強すぎたのか隼の体は、母親の足から離れ転がった。
それが始まりだった。
家を空けなくなった代わりに、母親は隼を虐待し始めた。
何を言っても何をしても殴られ蹴られた。
それじゃ‥‥と、今度は何を言わなくても何もしなくても、「何考えてるかわかんない。気持ち悪い」と殴られた。
隼は泣く事も、何も言う事もなく、ジッと耐えた。
何処で火が付いたのかわからない怒りが静まるのを、ジッと耐えた。
何の反応も見せない隼を母親は殴り疲れると、舌打ちをして、乱暴に鞄を掴むと家を出て行った。
母親が家を出ると隼は冷凍庫から氷を取り出し、殴られた箇所に当てた。
時々母親の爪が当たったのか、引っ掻かれた痕が沁みて痛かった。
そんな事をされても、隼は母親を嫌いにはならなかった。
こんな事するのは、あの男のせいだと思っていたからだ。
母親は自分を大切にしていて、心から愛しているんだと信じていた。
自分を抱きしめ、「隼‥‥私の可愛い隼。」そう言って微笑む母親を信じていた。
秋生の存在がそこにあるってことは、あの女の事でだ。
それしかないと、隼は思った。
小さな町の寂れた商店街の一角にシャッターの閉まったままのタバコ屋に隼は生まれた。
母親の祖母が営んでいたタバコ屋は祖母が亡くなるのと同時に閉店したが、奥にある住居スペースに母親と隼は暮らしていた。
17歳の時、未婚のまま隼を産んだ母親は隼を育てる為、昼夜問わず働いた。
17の娘が一人で子供を育てるのは、並大抵の事ではなく、綺麗だった髪はバサバサになり肌もガサガサになって疲れ果てていった。
けれど、母親は心から隼を愛し可愛がった。
母子家庭でも不自由させたくないという想いは強かったからだ。
けれど、隼が3歳の頃から、一人の男が家に入り浸るようになった。
その男は、首に金色のネックレスを揺らし、いつも煙草を吸って下品に笑う奴だった。
隼はその匂いも声も、その男の全てが嫌で男が家に居る時は家の前の公園で、一人時間を潰すのが日課だった。
隼が5歳になる頃、母親はいつまでも男に懐いてくれない隼の存在を煩わしく思う様になった。
余裕で数日、隼を家に一人置いて帰って来ない日もあった。
そんな時は決まって、テーブルの上に数百円の小銭と6枚切りの食パンが置かれていた。
隼はいつ帰って来るかわからない母親を待ち、1日1枚の食パンを食べて過ごした。
お腹が空けば椅子を台所に運び、よじ登り水道から直接、水をたらふく飲んだ。
どんなにしんどくても、綺麗に整理整頓されていた二人の家は、汚く汚れ果てていった。
ろくに食事を取らなくなった隼は、5歳児の平均よりも小さく華奢な体つきだった。
久しぶりに帰ってきた母親の足にしがみつき、「行かないで」と懇願した。
振り払おうとするけれど、華奢な体の何処にそんな力があるのか不思議な程に離れない。
母親は思わず、隼の小さな頬を平手打ちした。
勢いが強すぎたのか隼の体は、母親の足から離れ転がった。
それが始まりだった。
家を空けなくなった代わりに、母親は隼を虐待し始めた。
何を言っても何をしても殴られ蹴られた。
それじゃ‥‥と、今度は何を言わなくても何もしなくても、「何考えてるかわかんない。気持ち悪い」と殴られた。
隼は泣く事も、何も言う事もなく、ジッと耐えた。
何処で火が付いたのかわからない怒りが静まるのを、ジッと耐えた。
何の反応も見せない隼を母親は殴り疲れると、舌打ちをして、乱暴に鞄を掴むと家を出て行った。
母親が家を出ると隼は冷凍庫から氷を取り出し、殴られた箇所に当てた。
時々母親の爪が当たったのか、引っ掻かれた痕が沁みて痛かった。
そんな事をされても、隼は母親を嫌いにはならなかった。
こんな事するのは、あの男のせいだと思っていたからだ。
母親は自分を大切にしていて、心から愛しているんだと信じていた。
自分を抱きしめ、「隼‥‥私の可愛い隼。」そう言って微笑む母親を信じていた。