懺悔
隼が１０歳になった頃、隼の身体にいくつもの痣がある事に担任である男性教師である森本が気付いた。
前任の先生は産休の為、中途採用で夏休み明けに来たその男性教師は教師に憧れ教師になりたくて夢を掴んだ人間だった。
『夢』『希望』『愛』『友情』その全てで人間は生きれると思っているような熱血漢のある男だった。
少なくとも隼にとっては、煩わしい存在になっていった。
森本はある日の放課後、隼を呼び止め直接問いただした。

「隼くん。先生は何があっても隼くんの味方だ。その事はわかってくれるかい？」

隼は、小さく頷いた。

「隼くんの身体にある痣の事なんだけど、なにがあったのか先生に教えてくれないか？」

隼は黙ったまま下を向いた。

「先生は君を守りたいんだ。もしお母さんに暴力をふるわれているんだとしたら、隼くんはお母さんと離れなきゃいけないんだ。その方が君のためだし、お母さんのためにもなるんだ。」

隼の肩を掴んだ手に力が入る。

「い‥た‥。」

隼が小さな声を出した。

「うん？何？」

森本は隼の顔を覗き込んだ。

「先生‥痛い。」

弱々しい隼の声ははっきりと強い口調に変わった。

「あっごめん。」

森本は咄嗟に手を離した。
手が離れた瞬間、隼は自分の机に走りランドセルを手にした。

「隼くん、待って！」

呼び止める森本を隼は、睨み返した。

「お母さんは何も悪くない！！お母さんは僕だけを好きなんだ！！」

隼はありったけの力を込めて叫んだ。
小さな体から出された、その声は隼の想いそのものだった。
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表紙・目次

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