懺悔
スピーカーの向こう側は何も話さなくなった。
「おい…聞いてるのか?許してくれるってことか?」

{え?あぁ…あの事件ね…俺だって、ある意味被害者なんだよ。だって、あの女可愛がってやってたのに死ぬんだぜ。
迷惑だっつーの。}
{でも、無罪だったじゃん?}
{未成年だからね。法律が守ってくれちゃった。}

「な…なんだよ……これって…あの時…の…。」
スピーカーからは録音したのか、激しい音楽と若者が叫び、笑い、楽しんでる声の中で隼が話す声が流された。
【聞こえました?この声あなたですよね?】
「いや…これは、その、ノリだよ。その場のノリで言わされたっていうか…。」
【ノリ…ですか。】
「あぁ。俺は本気で後悔してんだ。悪い事したなって…。」
【後悔していた人間は被害者の名前さえ忘れるものなんでしょうか?】
【彼女はあなた方に遊ばれ傷つけられ、死を選びました。】
【そして、残された家族も死を選びました。】
【なのに、あなた方が幸せになっていいわけないじゃないですか!?】
その声は怒りと悲しみが溢れ出ていた。

暫くして深い深呼吸をついたスピーカーの声が言った。
【隼さん、それでは最後の鉄柱落としますね。】
「聞けよ!これは違うって言ってんだろ!」
【隼さんは、本当にわかってらっしゃらないんですね。】
スピーカーの声は笑いを堪えた。
【隼さん…これはただのゲームです。】
「あぁそっか…なんだ、そうだった。」
隼は本気ではないと思い安心した。
【安心しないでください。】
【ゲームって言うのは楽しむモノです。お陰様で私は本当に楽しむ事が出来ました。】
【けれど、最終目的は隼さん、あなたの〝死〟そのものです。】
【それで、このゲームは完成します。】
【何を勘違いされてるのかわかりませんが、このゲームは隼さんが助かる為のモノではないんです。最初っから。】
「な…そ、そんなこと、許されないだろ?わかってんのか?これ犯罪だぞ?」
その隼の言葉はスピーカーの声の主を爆笑させた。
「何がおかしい?!」
【犯罪?ご心配無く…私も未成年です。きっと法律が守ってくれるでしょう。】
【では、これで最後です。さようなら。】
ガシャン。


隼の最期の声は虚しく途切れた。
最期のその瞬間、そこに人の感情はないように思えた。
秋生には、あまりにもアッサリと最後の一本は落ちた様に見えた。
隼の体が、たった一本のロープで吊るされバタバタともがいたと思えば、力無く左右に揺れ、少しすると何度かビクビクとしたあとピクリともしなくなった。
隼の身体はロープで吊るされた、ただの人形になった。
人の死を目の当たりにしたのは、これで二度目だ。
隼の動きが止まったのを確認したかのように頭上のライトが静かに消えた。
まるで、それは最後まで秋生に見せる為だけのようにも思えた。

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