それを愛と呼ぶのなら
一頻り泣いた後、気まずさを感じながらも彼をリビングに招き入れた私は、明かりに照らされた彼の顔を見て、目を見開いた。


「都築真尋って……S高の!?」


思わず声を張り上げてしまった私を、彼の漆黒の瞳が捉える。

誰もいない家に、“都築真尋”とふたりっきり。この状況を、彼を知る大抵の女の子は羨むだろう。


「……知ってんの、俺のこと」

「あ……はい、まぁ。S高にかっこいい人がいるってクラスの子が言ってたので、名前だけは一応」

「……へぇ」


慣れているのか、然程興味なさそうに、彼は言葉を返してくる。


「俺もお前のこと知ってるけどな」

「へっ!?」

「ミスK高二冠の降谷葵だろ?うちの男どもが騒いでた」


なるほど、私にはそういう肩書きがあったんだ。

1年の頃、クラスの子に半ば強制的に参加させられた学園祭のミスコンでグランプリなんて獲っちゃったもんだから、去年も勝手にエントリーされて、二冠を達成したんだっけ。それで、結構話題になってしまったことがあった。

本音を言うと、ああいう空気は好きじゃなかったんだけど、断りきれなかったんだよなぁ。


「タメだし、別に敬語じゃなくていい。名前も、呼び捨てでいいし」

「あ……うん」
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