それを愛と呼ぶのなら
どんな道を歩けば、“普通”でいられたんだろう。

父親と母親の仲が崩壊していなかったら、ちゃんと家族として成立してたのかな。

そしたら、平凡でも幸せな人生を歩んで……自ら死を選ばなくてよかったのかな。


テラスに植えられた背の低い木の葉の隙間から、朝日が店内に差し込んでいる。

今の自分にそれは眩し過ぎて、反射的に顔を歪めた。




戻ると言った真尋を待っていたいような気もしたけど、何となく部屋に居たくなくて、カフェから戻った私は支度をし、借りていたDVDを手に再びマンションを出た。

ハイヒールを鳴らし、アスファルトの上を歩く。こうしてひとりで歩くのは、こっちに来てから初めてのことで、何だか慣れない。


今まではずっとひとりがよかったのに、変ね?寂しいと感じてしまうなんて。

抱いた不確かな気持ちは、こうも人を変えてしまうの?


「ありがとうございましたー」


DVDを返却し、店を出て駅を目指す。

マンションに居たくないながらも、行きたいところは行き尽くしたような気がして。うーん、と唸っているところに、目に付いた一枚のポスター。
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