それを愛と呼ぶのなら
言いたいことが渦巻いて頭の中を駆け巡り、そしてそれは私の感情のストッパーを壊した。


「……あんたこそ、何してんの?」


いつの間にかテレビが消された部屋に響いたのは、自分でも驚くほど低く、冷たい声だった。


「私が家を出て、今日で何日目か知ってる?ねぇ?今日まで何の連絡もしてこなかったけど、私がいないことに、いつ気づいたの?」


憎悪の感情が頭の中を支配する。

もう、どうしようもない。

ぐちゃぐちゃで、真っ黒だよ……。


「さっき聞いたよね?いるよ、大阪。……あんたの不倫相手の息子と一緒に」

『なっ……』

「いつから騙してたわけ、私らのこと」


きっと、今の私は狂ってる。

涙と笑いが一度に出てくるんだもの。

こうさせたのは、一体誰?


『葵!落ち着きなさい!今どこにいるの!?真尋くんは──』

「呼ぶなッ!」


呼ぶな。あんたがその名前を。

私の大切な……一生に一度の男の名前を。
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