それを愛と呼ぶのなら
知らないでしょう。

あんたに見せてきた顔は、私が今まで誰にも見せることの出来なかったものなんだって。

子供みたいに無邪気に笑ったのも、声をあげて泣いたのも。

全部真尋の前だけだって、知らないでしょう?


逞しい体をそっと離し、その頬に恐る恐る触れる。


苦しい。切ない。だけど、愛おしい。

その感情の正体が何なのか、私にはまだわからない。

でも溢れるこの気持ちは、恋と呼ぶだけではきっと足りない。


「……っ」


指先を頬に伝わせ、ゆっくりと、唇を重ねた。

昨日は真尋から。今度は、私から。


「……っ!?」


拒まれると思った。

拒まれると思ったのに真尋はそれを受け入れ、離れた唇を強引に、奪うようにぶつけた。

何度も……何度も。

感情を制御していた堤防が決壊してしまったかのように。
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