それを愛と呼ぶのなら
言いたいことは沢山あるはずなのに、それは何ひとつ言葉にならずに、ただ涙だけが頬を伝った。


真尋の唇が首筋を這うのに合わせて、徐々に生まれたままの姿にされていく。


誰と肌を重ねても、いつも満たされなかった。

いつもぽっかり、心に穴が空いていた。

でもそれって、当たり前だったのよね。

体だけ繋がったって、心が繋がってなきゃ何の意味もない。

そんな簡単なことに、私はようやく気が付いた。


「真尋……っ」

「……うん」


どこかの王子様が言うような甘い台詞は言ってくれない。

でもわかるもの。

大切なものを扱うように触れる指先が、余裕のないその表情が、私の声に応えてくれるその唇が……この男が私と同じ気持ちでいるって、教えてくれる。
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