それを愛と呼ぶのなら
真尋の瞳には確かな決意が宿っていて、その口から発せられる声も力強かった。


「だ……だったら!一緒に生きていこう?こんな風に、部屋借りてさ。ふたりで頑張れば、何とかなると──」


言い終わる前に、真尋が首を横に振る。


「無理だ。俺は、お前と一緒にはいられない」

「え……」

「これから先の人生を、お前はひとりで歩いていくんだ」


突き放すような言葉の全てが、ナイフになって私の胸をズタズタに切り裂く。

こんなにボロボロで、弱くて。

それなのにあんたは、ひとりで歩いていけなんて言うの……?


「そんなの無理よ!真尋がいなきゃ、私……!」

「言うなよ。男がいなきゃ駄目なんて言う、くだらない女に成り下がるな」

「……っ!」

「ひとりで立って生きていく覚悟決めろ。……大丈夫、葵ならできる。なんてったって、ミスK高二冠だろ?」


ずるいよ。

こんな時に、意地悪に笑うなんてずるい。
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