それを愛と呼ぶのなら
真尋の声色と様子が、これが悪い冗談なんかじゃなく、紛れもない現実なんだと私に教える。


「……腹違いの妹がいるって知ったのは、俺が10歳の時だった。俺が学校に行ってる間に、忍び込むようにしてお前の母親がうちに来てた」

「……」

「女物の靴が玄関に並べられてて。……少し前に離婚した母親が家にいるとも考えられなくて、俺は足音を消してリビングへ近づいた」


そこで聞いたんだ、と真尋が続ける。


「“あの子はうちの人の子じゃない”、“あなたの子なんだ”……って」


そんなに難しいことを言われているわけじゃないのに、うまく飲み込めない。

お父さんの子どもじゃないなんて、そんなこと考えもしなかった。

けして仲のいい両親ではないけれど、ちゃんと惹かれ合って結婚したんだろうって。
< 146 / 165 >

この作品をシェア

pagetop